軒と庇

最近の住宅にあまり無いなと思われるのが軒と庇です。昔の日本の住宅の写真を見ると大きく突出した軒が特徴的なのがわかります。

聴竹居

軒の役割

深い軒は夏の強い日差しを防ぎながら、角度の浅い冬の日光は取り込みます。真夏は直射がガンガン入るとせっかく冷房をしていても部屋の温度はぐんぐん上がってしまいます。逆に冬は太陽の熱を効果的に取り込んでくれるので暖房コストが下がります。

また梅雨のような長く続く雨の日でも窓を開け放ち部屋を明るく開放的にすることができます。夏の強い日差しを遮ることは家の内部の壁や床、家具を守ることにもつながりますし、雨だれによる扉やサッシ、外壁を汚れや劣化から守ってくれる効果もあります。

軒を生かした設計

と、実はとても優れた機能を持っているのです。前回の境界の話にもなりますが、庇や軒の下は外部と内部の曖昧な境界を作ることもでき空間により広がりを持たせることも可能です。軒が1mを超えると建築面積に入ってしまうという法律的な制約もあり、なるべく部屋を広くして境界ギリギリまで建ててしまい軒がなかったりする家が多いのですが、逆に軒があることで外を取り込み実際より広がりを感じるような空間設計ができたりします。

軒と庇は日本の気候においてはとても重要だし、うまく取り入れるとメリットばかりです。考えなしに取りつけると野暮ったくなりがちですが、バランスを考えて設計された軒、庇は機能的にも外観デザイン的にも重要な役割を果たしてくれます。

※ちなみに軒は屋根が外壁から外に出ている部分。庇は窓や出入り口の上に別途ついている小型の屋根です。




wacca architects 一級建築士事務所
坊垣祐司



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