少し前に書いた“空気の流れ”という記事が、昨今の新型コロナの影響なのかは良くわかりませんが、よく読まれているようなので空気の流れとも関係する換気のことについてもちょっと書いてみることにしました。
換気の目的
空間には新鮮な空気が必要です。室内には空気を汚す色々な要因があります。 例えば人が呼吸をするだけで酸素が減りますし、炭酸ガスが増加します。熱や水蒸気の発生。そして臭気や有毒なガス、ホコリの発生などです。それらの汚染された空気を外に出して、室内に新鮮でキレイな空気を取り入れること。それが換気の目的です。 そこで困るのが冬の季節の換気です。必要とはいえ、冬に換気ばかりしていると室内の気温が下がり、気流によって不快感を感じる原因にもなるので注意が必要です。夏もその逆がありますよね。
換気の種類
換気の種類には、その動力の違いで大きく自然換気と機械換気に分けられます。あと、汚れた空気の排出のやり方で、全般換気と局所換気に分けられます。局所換気とは、つまり住宅で言うとキッチンのレンジフードなどがそれにあたります。
自然換気とは自然の風や、室内の温度差によって生まれる空気の流れによって行うものになります。風の力を使う風力換気、室内と室外の温度差によって行う温度差換気などがあります。なので自然換気を効率よく行うには設計段階でよく空気の流れを考えて風の通り道を作ってあげることはとても大事です。
機械換気はそれとは逆に積極的に設備機器を使った換気です。送風機を使用して排気又は給気、時にはその両方を行います。排気だけを機械で行うのか、それとも給気を機械で行うのか、両方を機械で行うのかによって3種類に分けられます。
一般的な住宅では排気を換気扇等の機械で行い、給気については給気口を取付け、そこから自然に取り入れる第3種換気と言われるものがよく採用されています。この第3種換気は、ほとんどの住宅で採用されている方式ですが給気を自然に任せることになる。つまり外気をそのまま取り入れるので、例えば冬に暖房していても外の冷たい空気を取り入れることになり、逆に夏になると暑い空気が入ってきてしまうので空調の効率が悪くなってしまいます。吸気口を閉じてしまっている人も多いのではないでしょうか。ただしそれだと空気の入れ替えが行われないので室内の空気はどんどん汚れていってしまいます。
最近ではより進んだ換気方式として住宅でも給排気を共に機械で行う第1種換気が採用されることも増えています。こちらは給気の際、排気する時に捨ててしまう熱を回収して取り入れる「全熱交換器」というものを利用します。簡単にいうと冬にせっかく暖房をしているのに換気のために冷たい空気を入れてしまうということがなくなるのでエアコンの負荷を大きく軽減することができます。機器の初期投資が必要だったり、換気ダクトの設計など確認事項は増えますがトータルではより省エネで快適な暮らしにつながるといえます。
良い設備設計
店舗やオフィスなんかでも空調設備の設計はとても大事で、間違った設計をしてしまうと隙間風が妙に入ってきたり、不快な気流が発生したり、風切り音がしたり、ドアが妙に重くなったり…。設備については表面的には見える部分ではないし、しかも上手く設計してある空間ではより目立たないのです。というのも不快な時はすごく気になりますが快適であること、とは自然なこと、つまり気にならない。ということなので設備設計が上手な空間はそれが分からない。ということになります。うまくやればやるほど目立たない。というものなんですね。
住宅などでも意外に一般の方は見落としがちなので、一度考えてみると良いかもしれません。
wacca architects 一級建築士事務所
坊垣祐司