鉄媒染の工程 – 準備編


鉄媒染
鉄媒染を施したブナのカウンター(サンドブラスト加工)

設計デザインを終え、先月オープンしたイタリアンレストラン( bis tris ビストリス / www.bistris-aoyama.com )では “鉄媒染” とよばれる手法で木材を染めました。なかなか情報も少ない中、木材に詳しい方のご協力をいただき、海外のWEBサイトなどから情報を集めながらでしたが最終的にとても素敵な色に仕上がり、苦労した甲斐がありました。 竣工写真はこちら。

木材の塗装には着色オイルという方法もありますが、今回の方法は単純に木地に色を付けるのではなく木材特有の性質を使い木材自身の色を反応させ変化させる方法である為、本来のきれいな木目や質感を損なうことがないのが最大の特徴です。これは古来から“お歯黒”というお化粧につかわれていたものと原理は同じで、草木染めで今でも普通に使われている手法です。
木材でもお盆やカトラリー等を染めた例はよくあるようですが、今回のような大きなカウンター天板をこの手法でやった例はあまり見かけませんでした。(海外のWEBをみているとDIYでもやっているようでしたが…)

大雑把に仕組みを説明しますと“タンニンと鉄を反応させて黒く染める”というのがこれの原理です。

タンニンとは“革を鞣す”という意味の英語である “tan” に由来するそうです。ワインやお茶などにも含まれるいわゆる“渋み”ですね。植物界に普遍的に存在し、今回使用したブナ材に含まれるタンニン分の多さは中くらいといったところでしょうか。今回は足りないタンニンを補うのに茶渋を使っています。オーク材ですとかなりのタンニンを含んでいるのでそのままでもかなり黒く染まるようです。このタンニンの量や種類で色味や濃さが変わってきます

写真は設計した店舗に納入したカウンターです。元々がとても美しい木理のブナ材だったのですが、その美しさをそこなうこと無くグッと高級感のあるダークブラウンに変化しました。

詳しい過程は次回に。

※余談ですがワインに含まれるタンニンは製造工程で葡萄の果皮や種子に含まれるものに加え、熟成の際に使用されるオークの樽からも抽出されるそうで酸化を防ぐ役割もあるそうです。




wacca architects 一級建築士事務所
坊垣祐司

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