ZAPPETO(ザペット)について



H.P.DECO 好奇心の小部屋
今年の1月にフランス・パリの”Maison et Objet(メゾン・エ・オブジェ)”展で発表した我々のオリジナルプロダクトの”ZAPPETO”(ザペット)がこの5月に日本でも取扱いがはじまりました。
まずはH.P.FRANCEさまの北青山の”BAZAR et Garde-mange”(バザー・エ・ガルドモンジェ)でオーダー会です。こちらはパリ、メゾン・エ・オブジェに出展した際にMarthe Desmoulins(マルト・デムラン)さんというバイヤーの方と出会い実現しました。先週末には同系列店である”H.P.DECO 好奇心の小部屋 福岡店”でまずは先行して発表されました。


ZAPPETO_006
このプロダクトはラグという分類なのですが、普通のラグと大きく違うのは”立体的に設計”してあるところです。普通ラグというと四角い(以外もありますが)マットにどんな絵を書くか…というデザインですが、我々はラグを敷物としてでは無く”空間における家具”として設計をしてみました。写真では分かりづらいのですがこの波紋のようなぐるぐるとした円形はただのグラフィックではなく中心から外へ向かってだんだんと高くなっていて断面的には”お椀型”になっています。またこれは決まった場所にずっと敷いておくものではなく、自分の気に入ったところに持っていき使いたい場所で使うものです。座布団のような感覚ですね。コンセプトが“居場所をつくる”ということで、自分のお気に入りの場所を作るのはもちろん、人と人がつながる場所、集まってくる場所などいろいろな空間=居場所を生み出せるものとしてデザインしています。

昔から日本ではリビングやダイニングなどお部屋に名前などは無く、座布団と円卓を置けばダイニングになり、布団を敷けば寝室です。それらを仕舞い建具を開けば催事の際の広間が出来たりもします。日本では明治以後に西洋家具が入るまで、家具全体をさす言葉はなかったようです。ほとんどが建築にくみこまれた家具であり、家具自体が建築だったとも言えます。そういう意味では空間の考え方は今よりずっと自由であったのかもしれません。リビングだからソファとローテーブルを置いて…という決まりきった設えではなく、今日は天気がよくて日のあたる窓際が気持ち良さそうだな…と思った場所に持っていけばそこに自分だけの空間ができる。そんな使い方ができればもっと自由に空間が楽しめそうです。

考え方もそうですが、質の良さにもかなりこだわっています。先述したお椀型ですが、糸の打ち込む高さを職人の手で調整しながら打込んでいくことや綺麗な正円を描くこと、これはなかなかどこでもつくれるものではありません。是非この美しいカーブにも注目してください。材料であるウール、そしてその糸になるべく負担をかけずに染める“カセ染め”など、素材にもかなりこだわったからこそ美しい色が表現できています。

詳しくはこちらです。www.zappeto.com

オーダー会開催予定は下記です。

期間中はバイヤーのマルト・デムランさまによるカラーカウンセリングでパーソナルオーダーをサポートしていただけます。またマルトさんのオリジナル色も限定でご注文いただけます。是非この機会をお見逃し無く。

マルトデムラン

【Bazar et Garde-Manger】

日時:2016年5月21日(土)・22日(日)15:00~19:30

会場:Bazar et Garde-Manger

東京都港区北青山3-7-6  TEL: 03-5774-5426

【H.P.DECO 好奇心の小部屋 福岡店】

日時:2016年5月13日(金)・14日(土)15:00~20:00

TEL: 092-716-8202

【H.P.DECO 好奇心の小部屋 二子玉川店】

日時:2016年5月19日(木)14:00~18:00

TEL: 03-6411-7128

 


鉄媒染(塗装編)


IMG_9671_r
鉄媒染液の材料

今回は実際に鉄媒染によるブナ天板の塗装行程を紹介します。まずは鉄媒染に使う溶液作りから…最初に用意するものが上の写真の”お酢”と”スチールウール”です。酢といっても、ホワイトビネガーというトウモロコシから作られる濃度の高いもので写真のHEINZ社の物が仕上がりが良いらしいです。スチールウールはBon Starの#000極細です。細かいほど表面積が大きくなるので反応しやすいです。まずガラス瓶にこの二つを入れて反応させます。

IMG_9673_r
適当な瓶にお酢とスチールウールを入れます

ぶくぶくと泡をたてながらスチールウールが酢に溶けていきます。一週間ほど置くと…

IMG_0118_r
完成した鉄媒染液

真っ黒です。これを漏斗で濾過して不純物を取り除いたら鉄媒染液 – 鉄漿水(かねみず)の完成です。

IMG_0078_r
刷毛で下塗りしています

まず下塗りはお茶のタンニンです。この段階では濡れ色になるくらいで全く変化はありません。これが乾いたらいよいよ先ほど作った鉄媒染液を刷毛でぬっていきます。本当にあっという間に色が変わっていくのでとても不思議でした。なんだか家具制作というより科学実験みたいです…。鉄媒染以外にも”すず”、”アルミ”、”銅”など使う金属、タンニンにもお茶やコーヒー紅茶など組合わせで様々な色が出るようなので時間があればまたじっくりと試してみたいですね。

鉄媒染液を塗って反応した板の色が下の写真です。

IMG_0131_r
鉄媒染液を塗った直後

これはまだ表面が濡れていてかなりぎらついていますが、2-3日ほどして色味が落着いてきて最終的に”bis tris(ビストリス)”に納入したものになります。最後に表面の保護用にオイル塗装をして完成したのが下の写真です。

IMG_0445_r
色が落ち着いてきたら最後にオイル塗装で仕上げ

予想以上に良い顔になりました!客席の自然なブナ材のテーブルとのコントラストで素敵な雰囲気になっています。店舗のコンセプトでもある”舞台”としてシェフの料理を楽しんでいただけるカウンターになっていけばよいと思います。”bis tris(ビストリス)”のテーブルとカウンターは材料調達から塗装までを業者に頼らず自力で行い試行錯誤の中で完成しました。見た目はとてもシンプルですがクオリティは最高です。食事に行かれた際は是非シェフの故郷のブナの息吹を感じていただきたいです。

IMG_0453_r
こちらはシンプルなオイル仕上げのみ

こちらは客席のオイル塗装をしたブナのテーブルです。どちらも全く同じブナ材なんですが、仕上げだけで全く違うものになるのが面白いところです。


鉄媒染 (木材加工編)


前回ご紹介しました鉄媒染カウンターの実際の工程です。まずは塗装を行う木材ですが今回はブナの無垢板を使いました。元々の材木はこんな感じです。

IMG_9238_r
天然乾燥されたブナの原木

オーナーのルーツである青森の県産材でお店を設えたいと思い、材料にはこだわって探しました。これが様々な工程を経て納入したカウンターになるわけです。今回は運の良いことに、しっかりと3年以上天然乾燥された材料がまとまって手に入りました。

そもそもブナの木というのは水分を多く含み、加工後に狂いが出やすく家具の天板には中々使いづらい材料です。漢字で書くと”橅” つまり昔は使いみちが“無い木”とされてきたようです。今の時代ですと人工乾燥という方法もありますが、それでも加工にはとても気を使う材料です。シンプルに見える天板も中身は複雑に嵌合してあったり、様々な工夫で反りを防止しています。

まずはこちらの材料を分割し、接合(はぎあわ)せて目的の形状に加工をします。その際も反りの出にくいよう、そして木目が綺麗に出るように気を使いながらレイアウトしていきます。

IMG_9650_r
客席のテーブル天板用
IMG_9638_r
カウンター天板用 ワイドは約2000mm

で、下の写真が製材され天板の姿になったもので、まだ全くの無塗装の状態です。

IMG_9665_r
製材された無塗装の天板

客席のテーブルはホワイト系のオイルで無塗装に近い仕上がり(通常のクリアーで塗装すると濡色と言って無垢の色とは変わってくるので要注意です。)に、シェフの舞台であるカウンターは“鉄媒染”で黒っぽく仕上げていくことになります。一枚一枚の天板が自然の木ならではの多彩な表情をしており、塗装をするとさらにそれが強調されとても美しくなるはずです。

次は最後に塗装編です。


鉄媒染


鉄媒染 カウンター 設計 デザイン
鉄媒染を施したブナのカウンター(サンドブラスト加工)

設計 監理を終え、先月オープンしたイタリアンレストラン(bis tris ビストリス / www.bistris-aoyama.com)では“鉄媒染”とよばれる手法で木材を染めました。なかなか情報も少ない中、木材にとても詳しい方のご協力をいただき、海外のWEBサイトなどから情報を集めながらでしたが最終的にとても素敵な色に仕上がり、苦労した甲斐がありました。竣工写真はこちら。

木材の塗装には着色オイルという方法もありますが、今回の方法は単純に木地に色を付けるのではなく木材特有の性質を使い木材自身の色を反応させ変化させる方法である為、本来のきれいな木目や質感を損なうことがないのが最大の特徴です。
これは古来から“お歯黒”というお化粧につかわれていたものと原理は同じで、草木染めで今でも普通に使われている手法です。
木材でもお盆やカトラリー等を染めた例はよくあるようですが、今回のような大きなカウンター天板をこの手法でやった例はあまり見かけませんでした。(海外のWEBをみているとDIYでもやっているようでしたが…)

大雑把に仕組みを説明しますと“タンニンと鉄を反応させて黒く染める”というのがこれの原理です。

タンニンとは“革を鞣す”という意味の英語である “tan” に由来するそうです。ワインやお茶などにも含まれるいわゆる“渋み”ですね。植物界に普遍的に存在し、今回使用したブナ材に含まれるタンニン分の多さは中くらいといったところでしょうか。今回は足りないタンニンを補うのに茶渋を使っています。
オーク材ですとかなりのタンニンを含んでいるのでそのままでもかなり黒く染まるそうです。このタンニンの量や種類で色味や濃さが変わってきます
写真は設計した店舗に納入したカウンターです。元々がとても美しい木理のブナ材だったのですが、その美しさをそこなうこと無くグッと高級感のあるダークブラウンに変化しました。

詳しい過程は次回ご説明したいと思います。

※余談ですがワインに含まれるタンニンは製造工程で葡萄の果皮や種子に含まれるものに加え、熟成の際に使用されるオークの樽からも抽出されるそうで酸化を防ぐ役割もあるそうです。