外装木部塗装


以前に設計監理を行ったレストラン“bis tris(ビストリス)”が3周年を迎え外装の木部が少々色褪せてきましたので、今回上塗りをすることにしました。

3年経った外部の木材(樹種はイペ)

写真の通り、3年も経つと徐々に色褪せてきます。これも木材の経年変化の味わいの一つではありますが、上塗りを施すことで蘇らせることが可能です。

今回使用したのはオスモカラーのウッドステインプロテクター #708 チーク と #701 外装用クリアープラスのつや消しを1:3で混合したものを2度塗りしました。色に関しては色見本で確認、現場で調色しながら濃さを決定します。

こちらの塗料は含浸系の塗料で表面に塗膜を作るものではなく、木部に浸透して保護するタイプの塗料です。美しい木目をしっかりと活かした表情にしてくれます。木の呼吸を妨げず、高い撥水性、耐候性、耐紫外線性能がありますので外部の塗装にぴったりです。塗料も刷毛で塗るだけで美しく仕上がります。(下地の調整と養生は忘れずに)

イペの木目を活かして美しく蘇りました。

無垢材の良さはメンテナスをしっかりすれば何年経っても美しく保つことができるところです。時を経るにつれ徐々に、その場所でだけで造られる唯一の表情になっていくのが醍醐味です。

竣工当時はこちら。


商店建築掲載


昨年、設計デザインしましたイタリアンレストラン”bistris (ビストリス)”が商店建築8月号(2017.08 / P91-P94)に掲載されました。

目を見張るような派手さはありませんが、素材を吟味しシンプルな空間の中に細かいところまでこだわりが詰まっています。劇場へ足を運んだ時のような静謐な空気感、そこでの演目(コース料理)を楽しむこと、に注力して設計しています。

見かけました際には是非ご一読ください。

料理も美味しいので、気になった方は足を運んでみて下さい。
素材の空気感も感じていただけると思います。


鉄媒染(塗装編)


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鉄媒染液の材料

今回は実際に鉄媒染によるブナ天板の塗装行程を紹介します。まずは鉄媒染に使う溶液作りから…最初に用意するものが上の写真の”お酢”と”スチールウール”です。酢といっても、ホワイトビネガーというトウモロコシから作られる濃度の高いもので写真のHEINZ社の物が仕上がりが良いらしいです。スチールウールはBon Starの#000極細です。細かいほど表面積が大きくなるので反応しやすいです。まずガラス瓶にこの二つを入れて反応させます。

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適当な瓶にお酢とスチールウールを入れます

ぶくぶくと泡をたてながらスチールウールが酢に溶けていきます。一週間ほど置くと…

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完成した鉄媒染液

真っ黒です。これを漏斗で濾過して不純物を取り除いたら鉄媒染液 – 鉄漿水(かねみず)の完成です。

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刷毛で下塗りしています

まず下塗りはお茶のタンニンです。この段階では濡れ色になるくらいで全く変化はありません。これが乾いたらいよいよ先ほど作った鉄媒染液を刷毛でぬっていきます。本当にあっという間に色が変わっていくのでとても不思議でした。なんだか家具制作というより科学実験みたいです…。鉄媒染以外にも”すず”、”アルミ”、”銅”など使う金属、タンニンにもお茶やコーヒー紅茶など組合わせで様々な色が出るようなので時間があればまたじっくりと試してみたいですね。

鉄媒染液を塗って反応した板の色が下の写真です。

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鉄媒染液を塗った直後

これはまだ表面が濡れていてかなりぎらついていますが、2-3日ほどして色味が落着いてきて最終的に”bis tris(ビストリス)”に納入したものになります。最後に表面の保護用にオイル塗装をして完成したのが下の写真です。

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色が落ち着いてきたら最後にオイル塗装で仕上げ

予想以上に良い顔になりました!客席の自然なブナ材のテーブルとのコントラストで素敵な雰囲気になっています。店舗のコンセプトでもある”舞台”としてシェフの料理を楽しんでいただけるカウンターになっていけばよいと思います。”bis tris(ビストリス)”のテーブルとカウンターは材料調達から塗装までを業者に頼らず自力で行い試行錯誤の中で完成しました。見た目はとてもシンプルですがクオリティは最高です。食事に行かれた際は是非シェフの故郷のブナの息吹を感じていただきたいです。

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こちらはシンプルなオイル仕上げのみ

こちらは客席のオイル塗装をしたブナのテーブルです。どちらも全く同じブナ材なんですが、仕上げだけで全く違うものになるのが面白いところです。


鉄媒染 (木材加工編)


前回ご紹介しました鉄媒染カウンターの実際の工程です。まずは塗装を行う木材ですが今回はブナの無垢板を使いました。元々の材木はこんな感じです。

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天然乾燥されたブナの原木

オーナーのルーツである青森の県産材でお店を設えたいと思い、材料にはこだわって探しました。これが様々な工程を経て納入したカウンターになるわけです。今回は運の良いことに、しっかりと3年以上天然乾燥された材料がまとまって手に入りました。

そもそもブナの木というのは水分を多く含み、加工後に狂いが出やすく家具の天板には中々使いづらい材料です。漢字で書くと”橅” つまり昔は使いみちが“無い木”とされてきたようです。今の時代ですと人工乾燥という方法もありますが、それでも加工にはとても気を使う材料です。シンプルに見える天板も中身は複雑に嵌合してあったり、様々な工夫で反りを防止しています。

まずはこちらの材料を分割し、接合(はぎあわ)せて目的の形状に加工をします。その際も反りの出にくいよう、そして木目が綺麗に出るように気を使いながらレイアウトしていきます。

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客席のテーブル天板用
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カウンター天板用 ワイドは約2000mm

で、下の写真が製材され天板の姿になったもので、まだ全くの無塗装の状態です。

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製材された無塗装の天板

客席のテーブルはホワイト系のオイルで無塗装に近い仕上がり(通常のクリアーで塗装すると濡色と言って無垢の色とは変わってくるので要注意です。)に、シェフの舞台であるカウンターは“鉄媒染”で黒っぽく仕上げていくことになります。一枚一枚の天板が自然の木ならではの多彩な表情をしており、塗装をするとさらにそれが強調されとても美しくなるはずです。

次は最後に塗装編です。


鉄媒染


鉄媒染 カウンター 設計 デザイン
鉄媒染を施したブナのカウンター(サンドブラスト加工)

設計 監理を終え、先月オープンしたイタリアンレストラン(bis tris ビストリス / www.bistris-aoyama.com)では“鉄媒染”とよばれる手法で木材を染めました。なかなか情報も少ない中、木材にとても詳しい方のご協力をいただき、海外のWEBサイトなどから情報を集めながらでしたが最終的にとても素敵な色に仕上がり、苦労した甲斐がありました。竣工写真はこちら。

木材の塗装には着色オイルという方法もありますが、今回の方法は単純に木地に色を付けるのではなく木材特有の性質を使い木材自身の色を反応させ変化させる方法である為、本来のきれいな木目や質感を損なうことがないのが最大の特徴です。
これは古来から“お歯黒”というお化粧につかわれていたものと原理は同じで、草木染めで今でも普通に使われている手法です。
木材でもお盆やカトラリー等を染めた例はよくあるようですが、今回のような大きなカウンター天板をこの手法でやった例はあまり見かけませんでした。(海外のWEBをみているとDIYでもやっているようでしたが…)

大雑把に仕組みを説明しますと“タンニンと鉄を反応させて黒く染める”というのがこれの原理です。

タンニンとは“革を鞣す”という意味の英語である “tan” に由来するそうです。ワインやお茶などにも含まれるいわゆる“渋み”ですね。植物界に普遍的に存在し、今回使用したブナ材に含まれるタンニン分の多さは中くらいといったところでしょうか。今回は足りないタンニンを補うのに茶渋を使っています。
オーク材ですとかなりのタンニンを含んでいるのでそのままでもかなり黒く染まるそうです。このタンニンの量や種類で色味や濃さが変わってきます
写真は設計した店舗に納入したカウンターです。元々がとても美しい木理のブナ材だったのですが、その美しさをそこなうこと無くグッと高級感のあるダークブラウンに変化しました。

詳しい過程は次回ご説明したいと思います。

※余談ですがワインに含まれるタンニンは製造工程で葡萄の果皮や種子に含まれるものに加え、熟成の際に使用されるオークの樽からも抽出されるそうで酸化を防ぐ役割もあるそうです。